独り追いかけっこ 序章
「あっ、一馬!コンビニ!!コンビニ寄ろっ!」 「結人っ、危ないって!!」 目の前で揺れる自転車。 いつもの2人。 いつもの光景。 ……今日は違った。 そう考えているうちに歩道の信号が赤になって、 2人は先に渡りきってしまう。 2人はきっと気が付かない。 夕日が沈む 、 悲しい風景を。 残酷な色 、 虚しい空を。 待ち時間が、俺にとって永遠のような気がした。 車が走ろうとするために、エンジン音が空に響き渡る。 まるで、ドラマを見ているような感覚だった。 目がカメラになって、俺の脳に鮮明に伝える。 車でさえぎられた あの先は きっと温かくて、 今俺がここで感じている事すらわからないんだ。 たった数メートル。 あの2人はこの距離をどう思うかな? 長い? 短い? きっと答えは、空の彼方。 神様。 どうか …… 俺を独りにしないでください。 次